2022-11-01から1ヶ月間の記事一覧

蝉日記。 躓いた二人。四十六!。

駅の階段に十時前から僕は居た。そんなに人通りも無い。夜空には星が見える。光ってる。そう言えば遠く夜空に光り輝いているあの星だって、近づいてみればただの土の塊りだって言ってたな、決めつけてたな、僕は。そうやって何でも泥だって決めつけて生きて…

蝉日記。 人を愛す痛み。四十五!。

人間の諦める力、慣れって怖い。でもそれがあるから生きていられるのかもしれないけれど。 無言電話やそんな嫌がらせが気にならなくなりだした頃に女の子は言った。「あのね、、、話しがあるの。」僕はその口調だけで嫌な予感がした。 「色んな嫌がらせ、あ…

蝉日記。 壊れる。四十四!。

時には無言電話を取ると「はい、ご苦労様、よく続くね。」とからかってやったりもしたけど、それでも相手はしつこくかけてきた。僕は不良少年だった自分の過去で、他人に恨まれることは数え切れ無いくらい思いあたるし、これは女の子の方ではなくて僕に対す…

蝉日記。予定された雨。四十三!。

その頃になると少しだけれど二人の貯金ができたり、部屋の中に家具が増えたり電話も引いたりして、何か二人とも大人になったんだなって笑いあっていた。僕は幸せだった。 だけどそんな幸せも壊れる時がやってくる。僕は、そして女の子もやはりついていない種…

蝉日記。 永遠の課題、人。四十二!。

この女の子を守り、女の子との生活を作るために働いて、いつかこの女の子との子供ができて、その子供は可愛いだろうな。 その子供を育てる為に食わせる為に毎日毎日、家と職場を往復して、そうやって女の子と子供と一緒に暮らしていって一緒に年齢を重ねてい…

蝉日記。 だから生きる。四十一!。

だけど、それ以外の世の中の多くの人は給料袋に這いつくばってでも愛する女や子供、家族の為、守る為、自分が生きていく為にも、夢とか憧れを追いかける余裕も無いし追いかけたいのを我慢して捩じ伏せて捨てて生きていく。 道に乗せられているかもしれない、…

蝉日記。 想い、生きる。四十!。

あいつらは自分の意志では無い、自分の意志なんか無い。親とか先生に言われるままに何の疑いも持たず、自分で決めず、考えず、選択せず、小学校中学校と重ねて、言われるままに高校行って、何の目的も夢もやりたい事も無いのに、親が言うから、先生が言うか…

蝉日記。 本当の強さ。三十九!。

それを格好悪いと笑って、何もしないで、働きもしないで、そんな父親の身体を命を削る金で養われていたのに、笑っていただけの自分が一番格好悪いって今になって解る。 僕も今、女の子との生活を作る為に働いている。仕事で疲れて帰ってもその部屋に女の子が…

蝉日記。 人間の性善説。三十ハ!。

小学生の頃から甘ったれて、中学校から非行に走り、薬や盗みや暴力に、安逸な方向ばかりに逃げて生きてきた僕が初めてまともに働いた。 朝、今まで起きたことのない時間に毎日起きて夕方過ぎまでしっかりと工場で働いた。その工場への就職でさえ父親の縁故で…

蝉日記。 暗闇を受けとめるから。三十七!。

僕は自分の胸の中で思いなおす。小さな子供が何も知らないで罪悪感無く、虫とか踏み潰したり遊びで殺せてしまうけど、成長し大人になっていく過程でその罪も哀しさも知っていく。女の子だってそうだ。今まで誰にも教えてもらえなかっただけで、これからは変…

蝉日記。 暗闇も愛すから。三十六!。

それは一つの小さな植木鉢だった。あの日、初めて女の子と出会った日、再会かな、初めて身体を一つにしたあの夜、女の子が嬉しそうに水をやっていたさぼてんの植木鉢。 今はもう、さぼてんは無い。植木鉢だけになってしまっている。それでもその植木鉢は土も…

蝉日記。 雨でも傘はささない二人。三十五!。

その後僕は女の子が風俗嬢して稼いだ金で買ったであろう豪華な布団の上で女の子を抱いた。辛い事を聞かされた後だったけど、女の子を抱いていたら、やはりこの女の子が好きでこの弱い女の子守ってやりたい、ずっと一緒にいたいって思った。この日、僕は女の…