私の本当。

私は長く裏社会にいました。組織にいました。人間の清く綺麗な事も、ただの綺麗事も、醜い事も見てきました。今年二月、私の親分が無期懲役の中、獄死しました。泣きました。一人で。その人の近く、長く居て、その人の綺麗な所も汚い所も人間臭い所も全て、全て清濁飲んだ人でした。

 一人残された姐さんはお金は有り我儘な人です。分裂から組織は崩壊し、二百人からいた人間はばらばらになり、姐さんは一人ぼっちで、誰も連絡も面倒もみません。

 私は今、週に一回ですが姐さんの所に行き、買い物に連れて行き、病院に連れて行き、いろいろな使い走りをしています。姐さんに気持ち、忠誠心はありません。姐さんは親分の姐さんなので最大限の礼儀を尽くす人で忠誠心はありません。ただ親分が「おっかあの事頼むな。」その言葉が私を男にしてくれ、組長にしてくれ、養子にしてくれた親分のその言葉が、親分が死んで誰も姐さんの事をしなかったら親分が漫画になってしまう。そう思い、姐さんの所に今日も行って使い走りをしてきました。

 親分を無期懲役にして、獄死させたのは私ら組員のせいです。私は分裂後、色んな組織から誘われたけど、養子にまでなった私が他の組織に行ったと獄中の親分が聞いたら哀しむと思い、真面目に仕事をする道を選びました。

 今日、姐さんから親分の使っていた財布を頂きました。私の現役の時の名刺が一枚入っていました。姐さんも驚いていました。二百人の下がいた親分が私の名刺を。涙が出て一人、今日は親分の事を想っていました。私の極道の過去は別に隠していませんが、言う必要も無い事で、ここでは書かないつもりでしたが書きます。

 親父、ありがとうございました。