蝉日記。 人間の優しさと狂気。二十八!。

僕が、たった一つだけ覚えてて大切にしてたこの先生の言葉さえ無力だよ。人間がいる所はどこだっていじめがあるものなのか。女の子の事想うと、先生、どんな言葉も空回りする。痛い。

 強くも、優しくもなれずに、ただいじめられるままに、されるがままに泣いてるだけの傷ついてるだけの泣き寝入りしてるだけの人もいる。先生、どんな言葉も、態度も、月だって、太陽だって今の女の子には、ただの思い上がりだろ。

 僕は電話した。すぐに、女の子に電話した。何のためらいも無い。女の子が、あの小学校、中学校といじめ続けられてた少女であっても、卒業式の少し前、多くの生徒の前で裸にされほうきの棒で酷い事されたあの少女であっても、そんなのは全然汚れてなんかいない。その事で女の子は全然汚れてなんかいないんだ。それを見ていて何も言わない事ができたやつ、笑いながら見てたやつ、女の子の裸を楽しんでたやつ、そしていじめてた女達、ほうきで酷い事した女達、実行したやつら、そいつらの方が泥にまみれている。そしてそんなやつらが現在、高校行ったり、就職したり、恋もしたりしながら常識ある善良な一般市民、一社会人、普通の良い子って言われる。僕は、ただの無職の少年院出の不良で社会の落ちこぼれって言われて当然なんだけど、女の子が'誰とでも寝るどうしようも無い女'って街中で貶されてるのが、悔しい。

 それは女の子自身がしてきたせいなんだけど、悔しい。哀しい。

 僕は女の子の携帯電話へと電話した。だけど出ない。電話は何回か呼び出した後にすぐに留守番電話になってしまう。時計を見ると午後七時。この時間なら仕事してたとしても、仕事終わってると思ったのに出ない。まだ仕事してるのだろうか、何の仕事してんだろう。

 仕方なく留守番電話に伝言を入れる。'すぐに携帯電話に連絡ほしい'と。

 気持ち、伝わるかな、伝えられるかな、頼りない留守番電話に託してる。

 一人で想って、怒って、悲しんで、気持ちが疲れたのかな、僕はそのまま眠ってしまっていたよ。