蝉日記。 続き四!。
女達数人がみんなの、他生徒多勢の見ている前で女の子を全裸にした。数人で、嫌がる、泣き叫び、'許してください'と懇願する、'やめてください' '助けてください'って必死に涙を流す女の子を押さえ付け、笑いながら、笑いながら、笑いながら、女の子の性器の中に掃除用のほうきの棒を押し込んでしまったと。血が流れていたと。
どんな気持ちだったんだろう、どんな気持ちでやったんだろう、やられた女の子も、やった方も。
そしてその話しを聞いた同級生達も。ただ見ていただけの人間達も。
同じ女なのにどうしてそんな事できたんだろう、中学生の女か。
僕はその時、自分も中学生三年生だったその頃、その時は何も想わなかった。少しくらいは可哀想な事を、と思ったけれど、何も思わなかったのと同じだった。他人事だった。多分、関係無かったしどうでもよかった。どうでもよい話しだと思っていたと思う。ただ事が、事だったので記憶にあっただけで。
だけど現在になって想う。本当に想う。そして理解る気がする。
そしてあの女達にも、見ないふりしてたやつらにも、笑って見ていただけのやつらにも、自分自身にも言いたい。
'お前も人間の皮かぶっているのなら、少しは想えよ'と。
それから女の子を学校で見かける事は無かった。卒業式が近づいて、卒業式になっても、見かける事は無かった。
いつしか僕らの年代は中学校を卒業していった。
誰もが忘れてしまう。自分の痛みでもない他人の傷など。その頃にはもう、女の子があんな酷い事されてた事実なんて、みんなは忘れてた。一人の女の子が全てから逃げ出す程、傷つけられた、悲しんだあの事実を忘れてた。
他人事。僕も含めて学校中が。自分の傷、自分の痛みには過剰反応するけど、人の痛みはすぐ忘れられる。卒業式にも出てこなかった女の子。女の子はもう二度と人を愛することができないんではないだろうか。