蝉日記。  続き五!。

卒業してからの僕は、何の目的も無いのに、道端に座り込み薬物に溺れているだけの毎日だった。高校にも行ってない。試験さえ受けず中学校を卒業するとそのまま、街のごみになっていった。

 'この日日が続いたなら、何の未来も見えないな。'解ってはいたけど、仲間も、本当の意味での友達もいなくて、薬物だけで結びついてる仲間だけが居て、薬物だけが唯一の友達で、薬物、入らない時は全てに無気力で、どうしようもない人間、置き物だった。くず。

 盗みさえしていれば、薬物は買えたからただ何も考えず、十六歳の日日を過ごしていた。

 今から考えると、思い出すと笑っちゃう。一人で生きてる様な気にもなっていたから、親も家もいらなくて、いらないと信じ込んで強がっていた。

 少年の頃って、そう言う不安定な日日を不安とも思わない幼さと強さがある。その幼さと強さはいつしか、誰も、僕も、忘れていってしまうんだけれど。

 でも大人になった今でも時には想う。大人になっていく過程であきらめを一つずつ覚えていって、そんな幼さと強さを失っていくけど、でも多勢のみんなが信じてる'安定'って何が'安定'なのか未だに解らない。そんなの本当にあるのか。

 確かなものなんて少ししかない。

 それで良かった。あの頃は。

 あの頃僕の髪の毛は茶色に染められていて、痩せ過ぎの少年だった。破れた服着てた十六歳。

 そんな春に女の子と出会った。いや、再会って言うのかな。僕は中学校の卒業式少し前、消えてしまった、あの、女の子と再び、出会う。

 その時、再会した時僕は、その少女があの女の子って気づけなくて、知らないままに言葉を交わし、身体も交わしたけれど。

 盗みの仲間達と、どうでもよい毎日を過ごしていた頃、僕らのたまり場にその女の子は現れた。誰に連れてこられたんだろう、誰に誘われてきたんだろう、初めて見る顔だった。

 街の忘れられた様な片隅にある、自動販売機だけが何台もたくさん並んでいるその駐車場が僕らの暖かい場所だった。たまり場だった。夏、暑くて、冬、寒いんだけど、でも、いつも暖かい場所だった。そう思っていたのは、このたまり場にいるやつらの中で、もしかしたら僕だけだったかもしれないけど、僕には、家よりも、部屋よりも、どこよりも暖かい場所に想えた。

 そのただの駐車場が僕の存在していて良い居場所とさえ感じてた。