蝉日記。 暗闇を受けとめるから。三十七!。

僕は自分の胸の中で思いなおす。小さな子供が何も知らないで罪悪感無く、虫とか踏み潰したり遊びで殺せてしまうけど、成長し大人になっていく過程でその罪も哀しさも知っていく。女の子だってそうだ。今まで誰にも教えてもらえなかっただけで、これからは変わっていく事ができる。信じる。

 人に殴られ蹴られる痛みを、哀しみを知っている女の子はきっと気づくこと知る事ができる。だから僕だけはこれからもこの女の子についていてあげたいし、何よりもこの女の子が好きだから。女の子の中のもう一人の女の子をも抱きしめて、その閉じている闇も目も覚ませてあげたいって思いなおした。生きてきて、生きていって、色んな人と出会って、色んな酷いことをされて悲しい思い出だけが重なって出来上がった感情。喜 怒 哀 楽を感じてそれが基になって人格が形成されたりその人間の色になってしまう。だったら今、現在の中に女の子の中に、もう一人の闇の女の子がいるなら、それは女の子のせいなんかではなく、全部全部全部、あいつらいじめてたやつらのせいなんだ。

 僕は思いなおした。瞳を見つめたまま肩を抱き、体も抱き寄せる。その身体は暖かい。やはり、僕は優しい気持ちになれる。だけど僕はこの時一つの事に気づいていなかった。子供が持つ残酷さが大人になっていく、成長していく過程で気づいていける無知ゆえの残酷さだとしたら、女の子は子供の頃他人に踏まれる悲しみも苦しみも、そう、涙ももう、知っているはずなのに、、、。なのに、さぼてんに見せた女の子の行為はどうして、出来るんだろう。知っていて解ってやるのは、確信犯は救いが無い。

 女の子は、自分自身、女の子自身が憎んでいた側の人種になってしまったのかな。それとも人間なんてどちらの側もなくて、誰もが残酷さも優しさも両方を持っているのかもしれない。でも、いじめられてた子がいじめる側になってしまう事ってよく有る事かもしれないけど、救いが無い。僕はあの頃、女の子が受けてたいじめの全てを知っている訳ではないのだけれど。

 この頃の僕は女の子が好きで、目が見えず、一つの事に全く気づけないでいた。