蝉日記。 その哀しさは届いたよ。三十一!。

心が涙を流そうとしている。女の子の言葉にも何を答えて良いのか解らない。泣き声で、あふれる様に話してきた女の子。きっと、今まで何年も誰にも言えなかった事を一気に叫んだんだ。

 そして女の子は続けた。「あの日ね、あの駐車場で君を見た時、私はすぐに気づいたよ。中学校の時に学校でも街でも一番の不良だった君だもん。君のこと知らない人、この街若い子にいないし。でも、その時はただそれだけの感情で'寝ても良いかな'くらいしか思ってなかった。」そして、少し冗談の様に、「君は私のこといじめなかったしね。」って笑いながら言ってくるけど、それがより哀しい。

 「その後、逮捕されたとか少年院入ったって噂で聞いた時は少し、淋しい気がした。もう、二度と会えないって少し思ったりもした。だけど少年院出てすぐに私の実家に来てくれたでしょう、その話し聞いた時はすごくすごくすごく嬉しかったの。だけど君も私の過去、全部知ったら、君も私の事嫌いになるだろうな、汚れてるって思うだろうなって不安だった。」沈黙する。そして、「今、この話しを聞いて私の事嫌いになっても仕方ないよね。」

 そんな諦め声で言うなよってくらいの声で言う。

 「今からそっち行って良いよね。行くよ。」

それが僕の答えだった。

 「こんな女なんだよ、、、私。」女の子は小さな声で言う。僕はもう一度言った。

 「今からそっち行くよ。そこ、どこなの。会って話してさ、そうだ、今夜はもうずっとずっと寝ないでさ朝までずっと語りあかそう。色んなことさ、お互いの事全部。思いとか、好きな歌とか、笑えることやくだらないことだって含めて全部語りあかそうよ。僕の事も全部話すよ。途中で酒とかも飲んだりしてさ、ずっとずっとずっと朝まで。全部だよ。」

 僕は他人にあまり本当の自分を見せたことが無い。見せない。自分の思いも話したりしない。だけど今夜は何だって話せそうだった。

 女の子は「ありがとう、、、。」

 細い声で言ってから場所を教えてくれた。