蝉日記。 君の声も涙も届くよ!十九!。

女の子の事を時に、逆に、あんな誰とでも寝る女、何十人ともやってきた女が本当に気になるのか、好きな訳ないではないか、忘れろ、忘れろって自分に言い聞かせたりもする。男って狡いかな。そう、本当に狡い生き物だ。

 好きな事をしていない約一年はすごく長い気がした。少年院を仮退院した時、僕は十七歳になっていた。でも、もうすぐ十ハ歳になる。保護観察とかもつけられていて本当は、もう仕事したりして落ち着く事考えなくてはいけないんだろうな。

 だけど僕は、その頃自分を少年院で一年間矯正教育って言うのを受けてきたのに何も変わっていないって思ってた。人は他人から、自分の外からではなくて、自分から、内から変わろうって思わなければ何も変われない。'更生しよう'と強く本人が思わなければどんな教育を何年受けても変われない。本人の'聞く耳'が一番大切なんだろうな。

 だけどそんな僕でも一つだけ、変わったって言うか誓ったことはある。少年院を出る時、もう、これを期に薬物は止めよう、全ての薬物はやめるって強く誓った。

 これだけは少年院の一年が無駄にならなかったこと。

 いつまでも薬に頼っているのも溺れているのも仕方のないことだし、少年院に入る前、別に何かに満たされなくてとか、そう言う訳の解らない精神的な理由で薬物に溺れていた訳でもない。僕の場合は盗みの仲間達、不良仲間がやっていた見栄や流行的な気分で軽い気持ちで一回やったら良くてやめられなくなっていただけのことだった。逮捕されてから少年院を出るまでの一年と少し、薬物をやらなくても、一回もやらなくても苦しくなかったし、生きてこれたしそんなに強くやりたいと思う事もなかったから、もうこのままやめていこう、そう思っていたのがいつしか誓いと言うものになっていた。

 街は何も変わっていない気がしたよ。たった一年でそんなに目まぐるしく変わらないと思うけど、何もかも平均的なこの街は相変わらずこの街のままだった。

 昔の盗みの仲間達や不良達とも会ったりした。皆、変わらずにだらけていて、薬物効きめの瞳をしていて、僕にも「やるか。」と薦めてきたけど、やわらかく断っておいた。

 あの駐車場へも行った。そう、女の子と出会った場所でもある。

いつも僕がいた、大好きなあの駐車場。その場所に向かう時は、やはり、女の子の事想い出したし意識もした。

 駐車場は何も変わっていなかった。安心したし懐かしさがこみあげてきた。暴走族のやつら、不良少年、家出少女までが仲良く一緒にたまっている不思議な場所。僕らのように薬物と盗みと暴力に浸かっている少年や家出少女達、まだたくさんいた。懐かしい顔が僕を見て、

 「出てきたんだ、おめでとう。」

て皆、言ってくれる。何も変わっていない、本当に何も変わっていない、時間が止まっているような、この場所。取り残されたようなこの場所。

 僕が少年院に入る前とそこにいる顔ぶれもあまり変わっていないこの場所は、この駐車場は、現在も今も変わらずにこの街の不良少年たちの時間を独り占めにしている。この街の不良達を暖かく抱いてくれていた。