蝉日記。 再会した二人。三十二!。

女の子が一人暮らしをしていると言うその部屋は隣町にあった。僕らの街よりも人口も多く遊ぶ所だってたくさんある。小さいけれど歓楽街だってある。そんな街の駅前の便利な場所に女の子の部屋はあった。新築の部屋だった。

 僕は真夜中の道をそこまで単車で走ってきたのだけれど、その新築の大きな部屋を見て驚いた。'本当にここかな、間違えたか'って本気で思った。僕と同い年の女の子が、未成年の女の子がどうしてこんな所で一人暮らしなんてできるんだろう、不思議に思えて、そして嫌な予感もした。

 僕はその部屋の前、部屋を呼び出して解錠してもらう。嫌な予感は消えない。女の子の部屋に向かう。女の子は部屋の前で、外で僕を待っていてくれた。

 一年半ぶりに会う女の子の顔は笑顔だったけれど、さっきたくさん泣いたんだろうな、目が腫れていた。女の子の部屋の前の通路で二人、見つめあったままになってしまう。僕も照れてしまって言葉が出せない。女の子は一年半前のあの日より綺麗になっていた。あの頃は髪も服装もあか抜けていなくて、有り合わせの様な服だったのに、今はあの頃黒かった髪は茶色く染められていて、服も流行に乗っている。一年半前には無かったつめの付け爪の原色の色が違う女の子を見ている気にさえさせる。

 少し、痩せた気もする。やはり、綺麗になっている。それは嬉しい事なのかな。でも本当は少し'違う'とも思った。僕が気になっていた女の子は、何か、普通の服とか着てる、どこにでもいる様な女の子で、だけど雰囲気とか、しぐさとかが、その過去とか行動、誰とでも寝てしまう行動だけど、それとは逆に純情に見えて、そんな匂いがあって、そして表情に翳りのある女の子だった。

 そんな女の子がなぜか心に引っかかって、たまらなく気になっていたのに一年半ぶりに会った女の子は水商売の女の様になっていた。

 綺麗なだけ、可愛いだけ、顔が良いだけの女ならいくらでも知っている。あの頃あの駐車場にもそんな女ならたくさん居たし。

 だけどそんな思いは胸の中に押し込んだ。どんな姿でもどんな見た目になっていても、やはり女の子は女の子だ。それにさっきの電話での叫び。あの声、言葉だけで、今、ここにこうして会いに来たことを幸せだと思う。それに、こうして見つめあっているとやはり会えて嬉しかったと思う。本当に思う。女の子が「来てくれたんだね、ありがとう。お帰りなさい。少年院辛かった。」って言ってくれた。僕は何も言わず、抱きしめた。