蝉日記。 想えばそれは予定された雨だった。二十四!。

僕は頑張って、勇気も出して女の子の家の呼鈴を押した。女の子に会いにやって来たのに、会って話しもして、自分の気持ちもはっきりさせて、想いも気持ちも伝えたくてやってきたのに、何故か、今、誰も居ませんようにって願いながら呼鈴を押している。矛盾した自分がいる。

 二度目の呼鈴を押した時、扉の錠を開ける音がした。扉の隙間から、多分、母親が

 「どちらさんですか。」

 きっと女の子の母親だろう、中年の女の人が隙間から覗いたまま言う。僕は、

 「あの、、、。」

 それしか言えず、うつむいていると、人の良さそうな女の人は、

 「もしかして、あの子の友達かな、あれ、知らないの、あの子四か月くらい前からここを出て一人暮らししてるのよ。君、昔の友達。」

 言ってくれた。

 僕は昔からの友達のような顔をして、

 「そうなんですか。どこに住んでいるんですか、今。」

 と聞いたけど母親に、

 「やはりあの子も女の子だから、女の一人暮らしだから、ここで住所までは教えられない。けれど君の連絡先と名前教えといてくれれば伝えとくよ。」

 と言われ、僕は一瞬、内心、女の子が僕の名前なんて覚えてるのか、知ってる訳無いし僕の存在も忘れてるかも知れない。連絡先教えたってきっと連絡なんてくる訳無いよ、と、女の子に会えなかった気落ち、期待してた分だけの悔しさと不貞腐れで思ってしまったけど、でも半分、なりゆきと新しい期待を込めて女の子の母親に僕の名前と家の電話番号、そして買ったばかりの携帯電話の番号を教えといた。

 帰り道は、ゆっくりと、ゆっくりと歩いて帰った。ひどく淋しい感じがした。

 僕と女の子はやはり縁が無かったんだって思い知らされた気がして、自分の足がひどく重かったよ。