蝉日記。  続き十一!。

「今日、私とやったのは私を減らしに来たの、君の言い方だと。それに女は減るけど男は減らないの、さっき私とやっといて私を磨り減らしたのに私に減るとか説教するのそれ、一体何なの。ただやりたいだけで今日、私と寝た君も今までの男達も金で女買う大人も男は減らないの、男だから磨り減らないの、馬鹿にしないで、勝手な事言うな。」

 何で、こんな口論しているんだろう。どうして口喧嘩になってしまったんだろう。どうしてたった一回遊びで寝た女にこんなむきになって熱くなっているんだろう。二人は口喧嘩の後、互いが黙り込んでしまう。

 部屋の中裸のままで二人仰向けになっている。気まずい雰囲気になっていた。こんな事初めてだった。今まで初めて会った女と遊びで寝たのは何回もあるけど、こんなむきになったり口喧嘩する程、相手の事気になったりしたこと無い。

 部屋の窓にある台の上に小さな小さなさぼてんの鉢植えが置いてある。何か、そのさぼてんが女の子と似合っている気がして、それと、この気まずい雰囲気、沈黙を何とかしたくて話しを作る様に言ってみる。

 「あのさぼてん、何なの。」

 女の子は僕のその声を聞くと急に態度が変わって明るくなった。そして自分の好きなもの、大切なものを聞かれた時の嬉しさの声で、

 「さぼてん、可愛いの、すごく可愛いの。私のたった一人の友達。」

 急に笑顔で答えてくれた。そして思い出した様に立ち上がって裸体のままを気にもせずに部屋から出て行くと、水を汲んできてさぼてんにやりはじめた。少しずつ、少しずつ、大切そうに。まるで自分の赤ちゃんか、妹に、幼い妹に愛をあげる様に。

 その姿は楽しそうだった。この女の子と、また会えるかな、会いたいなって思った。

 

 その後、女の子とは会えなくなった。会う事ができなくなった。会いたくても会えなかった。

 僕は逮捕された。この国の大きな力に、法の大きな力にぶつかって。

 盗みや暴力、薬に浸かっていた僕は女の子の部屋に泊まったあの日から二日後に警察官が家に来て逮捕されてしまう。早朝、何人かが来て逮捕状見せられて、そして拘束された。手錠も掛けられた。

 その逮捕されるまでの二日間には、やはり、少し、女の子のこと想ったりした。

 'また会いたいな'くらいの想いだったけど。