蝉日記。  続き十!。

あと、汚れた自分が女の子の気を損ねて女の子と寝られなくなったら嫌だって言ってるのも少しあった。女の子は謝り続けてると、

 「私はどうでも良いの。でもお母さんの事は悪く言われたくない。たとえ世の中や社会に私がどう写ってようとそんな私に優しい大好きなお母さんだから。」

 今度は優しい口調で言ってくれた。女の子の機嫌が直った事に安心したけど、僕はもう一度謝っておいた。 「ごめんね。」

 女の子の部屋で僕は身体を交わした。正直、何の感動も無かった。女の子を馬鹿にしている訳では無いけど、一瞬の男の身体の気持ち良さはあったけれど感動は無かった。

 女の子も同じだったと思う。だったら僕達は何でこんな事をするんだろう。男は欲望ってのもあるだろうけど。

 初めて女の体を知ったのは十三歳、中学校二年生の時だった。その頃は'純愛'気持ち悪い、なんて思ってて、感違いしてて、女とやれれば、それで良くて何人とも寝た。 

 でもそれを、くり返して、くり返して続け過ぎて通り越すと、何だか想う、'何をしているんだろう。'って。結局、心、気持ちの入って無いのって何回しても、誰としても同じで、吐き出しているだけで、棄てているだけで、何の感動も無い。でも、また同じ事繰り返してしまう男って。

 女の子も同じなんだろうな。でも、だったら何でこの女の子はそんな感動も無い、無意味な事を誰とでもすぐんだろう。男なら性欲の処理ってのもあるけど女の子ならただ身体の気持ち良さってだけなら、きちんとした彼氏でも作って、その愛する人とだけすれば良いのに。

 女の子の部屋で終わった後の沈黙の中、女の子と二人並んで寝てる。僕は一人そんな勝手な事を考えていた。自分のしてる行為を忘れて。

 「ねえ、何で僕と寝たの、誰とでもこんな事するの。」

 またも、心無い事を聞く、言う、自分がいる。その頃は幼な過ぎて、その心無さに気づけなくていたけど、これでは風俗の店で説教してる親父、買春した後に少女に説教してる親父と全く同じだ。

 だけどその時は聞かずにいられなかったんだ。一回寝ただけでもう自分の女って思った訳でもないし、好きになったとかでもないって思うけれど、何かこの女の子の事が気になって、知りたくて。

 きっと独占欲や嫉妬や意地悪の気持ちも少しはある。僕は子供だった。幼くてどう仕様もなかった。女の子は仰向けに寝ていた身体を少しも動かさずに静かに答えた。

 「するよ、誰とでもするよ、誰とでもしてきたよ。この答えで満足。」

 冷たく言われた気がして少し頭にくる。

 「何だよ、その言い方。」

 僕はきつい言葉を返した。女の子は、

 「結局自分もやったくせに、終わった後にそんな事言う男、よくいるよ。」

 言ってきて、僕は自分の中の汚ない部分をはっきり言われた気がして逆切れの様に言った。

 「でも街中の男と寝てるんだろう、誰とでもやってんだろ、噂になってるよ。何でこんな事してるの、もっと自分とか大切にすれば良いじゃないか。」

 言ってしまってから、その言葉に恥ずかしくなった。その自分の言葉の薄さ、軽さに。

 今、思えば僕は最悪だった。金で女を買った大人がその少女を説教して自分の滑稽さに気づき逆切れしてるのと同じだった。

 「だから自分も結局、私とやったくせにそう言う事言わないで。街では私の事、貶すの流行ってるし、どんな噂されたり言われても、実際そう言う事してるから何言われても仕方ないけど、君にそれで迷惑かけた、君だって何で今日、私と寝たの。ただわやりたかっただけだからでしょう。別に私の事好きとか愛してるとか無いくせにやりたかったからでしょう。卑怯者の言い方だよ、さっきの。

 私の事、構わないで。別に誰と寝たって君に迷惑かけてないし、減るもんじゃないし、私の勝手じゃない。」

 女の子も怒ってしまったのか、きつく言ってきた。

僕は返す。

 「減るよ、減ってくよ、減るもんじゃないって思って誰とでも寝てる自分が一番磨り減っていくよ。気づいて無いだけだよ。」

 女の子は僕を睨んできつい瞳で返してくる。