蝉日記。 続きハ!。
物や道具に想うのも想わられるのも嫌いで、人間は物や道具じゃないって反発してたのに、そして、それは男と女の意味でも同じはずなのに、僕も簡単に自分の欲望や都合で他人を物や道具と扱ってしまう、見てしまう、どうしてだろう。
やはり、人間は自分の都合で生きているのだろうか。
「どうやって誘えば良いんだよ。」
聞くと仲間は、「何だ、やはりお前もやりたいんだ。あんな女、軽い気持ちで誘えば良いんだよ。'やらせてくれって言えばすぐやらせてくれるよ。」
そう答える。
僕は暗闇の中、自動販売機の光だけが光っているその駐車場の片隅に、場違いの様に座り込んでいるその女の子に近づいた。どんな顔して近づいたんだろう。僕は自分が嫌いだったはずのやつらの顔になっていく。
「ねえ、何してるの、ここに来るのは初めてだよね、暇ならさ話そうよ、遊ぼうよ、暇だろ。」
自分が何言ってるのか解らない気分。女の子も'何言ってんの、こいつ。'って顔してた。無表情にも思えたけど。
でも、すぐに作り笑いしてくれた。一瞬だけ笑ってくれた。僕はその作り笑いに救われた様に、「暇ならさ、遊ばない。」もう一度言ってみる。
その時の僕は、きっと、すごく媚びた顔していたに違いない。
女の子の作り笑いの意味も解らない男だった僕は幼くて、どうしてこんな普通っぽい女の子がこの吹き溜まりみたいな場所に居るかも考えずに、考えられずにただ、何とか女の子の気を引こうとしていた。作り笑いの後に初めて女の子が口をひらく。
「どうして私なんかと遊びたいの、他にもたくさん私なんかより可愛い子、この駐車場はたくさんいるよ。」
そして大きな瞳で僕を見つめてから、
「やはり私がすぐ寝れる女だから、私とやりたいの。そんな噂聞いてるんでしょう。本当だよ、その噂。私、誰とでも、ほとんどの男となら寝るよ。
君も私とやりたいの、良いよ、別に。」
当たり前の様に言った。平気で言った。でも強がっている様にも思えた。そして言われて、
'何で、どうして、そこまで自分を棄てる、棄てているんだろう'とか考えずに喜んで「本当、本当にやらせてくれるの、じゃあさ、今から部屋来いよ。」なんて言ってたあの頃の僕は本当に本当に本当に子供だったよ。