蝉日記。 それでも幸せになってね。四十ハ!。

でも狭い独居房、鉄格子の中、壁の中、女の子との思い出で救われた事何度もある。心が折れてしまいそうな時。夜中でも昼間でも気が狂いそうになる時がある。淋しくて気がふれそうになる。そんな時女の子との一つ一つの思い出が、女の子への想いが救ってくれた。

 苦しい時、辛い時、痛い時、何度でも何度でも何度でも女の子を想った。人間って結構、強いよね、人間って希望があって思い出があるから生きていけるって言うのは本当なんだって思った。感じた。

 傷害罪で求刑四年だって。

 弁護士はいくら黙秘の部分ばかりと言っても、成人初犯で傷害罪でこの求刑は、四年の懲役刑求刑はあまりにも常識外れだ、検事は狂っていると言っていた。僕は本当にどうでも良かった。他人事の様な気さえした。女の子はまだ来ない。その方が大きな罰だった。

 懲役三年。未決日数通算七十日。執行猶予は無しの実刑判決だった。初犯で傷害で求刑は四年。執行猶予もつかずの実刑。弁護士はそれらの事に、自分事の様に怒ってくれるふりをしてくれた。控訴しようとも言ってきた。僕はもう、どうでも良い。控訴もめんどうくさい、しないと言っていた。弁護士も自分自身の弁護士としての顔が潰れたから、親から金、たくさん取ってる私選の弁護士だから言ってるだけだし、女の子に捨てられた今、別に刑務所に送られる事に何とも思わない。

 判決の日から十四日間で刑が確定するという。僕は静かに確定の日を待っていた。

 明日、確定するという日になって面会を告げに職員が来た。親でも面会に来たのかと思って面会人の名前を聞いた。

 女の子だった。僕は嬉しさと怒りが、最高になった。どうして今まで、、、。

 面会室に行くまでの間、会ったなら、顔見たなら、今まで放置してた事怒ってやる、でも嬉しくて怒れないだろうな、何を話そうか、など色んなことを考え考え考え、でも考えはまとまらない。そして面会室に着いてしまって面会室に入った。

 居た。本当に女の子が居た。逮捕されたあの日から随分経つのに変わらない女の子がいた。涙が出そうになった。まだ涙なんか出るのかよって思った。

 「今まで、何で来なかったんだよ、元気か、元気なのか、どうして今まで、、、何かあったのか。」僕は一息にそれだけの言葉が口から出た。女の子に対して怒ってるのと心配してるのが混ざった様な言葉だった。

 女の子はなぜか静かだった。「別に、何も無いよ。変わってない。あの部屋ね、二人で住んでた部屋、君の親に言って解約しといたから。私の荷物は全て出したよ。君の物は、君の親がどうにかするって。私一人では家賃とか払えないし、一人で住んでても仕方ないしね。明日くらい刑、確定するんでしょ。最後だから会いに来たの。」何もなかったかの様に言う。

 「何、言ってんだよ、部屋とか荷物とかそんな事どうでもよいだろう。そんな事話しに来たのかよ。そんな事話しに来たんじゃないだろう、違うだろ、もっと別に話すことあるじゃないか。」

 僕は本心は女の子が部屋は解約し荷物を出した事に、二人の思い出と二人の城が崩れていくのを感じて心が締め付けられた気がした。