蝉日記。 壊れても今でも想ってるから。四十九!。

続けて僕は叫んだ。「何で今まで来てくれなかったんだよ。手紙も面会も、、、。何かあったのかと心配して、不安で、心配して気が狂いそうだったよ。何で、、、。」

 「別に何も無かったよ。変わった事は。」女の子は普通に言う。僕は叫んだ。「どういう気持ちなんだよ。」その僕の言葉を聞いて、女の子の返してくれた言葉は、「わかんない、、、。」

 信じられなかった。

いや、気持ちの奥で予想してたけど、信じたくない答えだった。もしかしたら僕よりもあの冴えないやつの方を選んだのかって疑った。あいつと一緒になるのかって。

 「あいつのが、あの変なやつのが良いのか。」

 「何言ってんの。あの人は街から消えたみたい。一回も会ってないよ。」

 「だったら何で、、、。三年、三年待っててくれるよね。絶対待っててくれるだろ。」

 女の子は無表情で通してた顔を、この面会室に入って初めて変えた。それは作り笑いだった。そしてその作り笑いをしながら一言、

 「考えとくね。」

 そう言い残して出ていった。'考えとくね'って何だよ、何なんだよ。僕は怒りと哀しみで自分を見失いそうになる。

 次の日、僕の懲役刑が確定した。そのうち少年刑務所にでも送られるんだろう。 

 馬鹿野郎、僕はあの街で誰もが認める一番の不良だよ。あんな女の子、いらないよ。そう考えようとしても、思い込もうとしても、そうなれない。思えない。人間って弱いな。いや、僕が弱いんだ。情け無い。未練がましい。だめな男だね。

 世界中に女なんて腐る程いるじゃないか。星の数程、女なんているじゃないか。あの女の子より素敵な女、きっといるよ。そう考える裏で星の数程いる女の中で、あの女の子はこの世に一人しかいないんだって想う自分がいる。

 女の子のこと、恨んだり、憎んでみたりもする。もう忘れようとも思う。それでも僕は、やはりあの女の子との思い出に救われている。

 こんな裏切りされても、裏切られても鉄格子の中、女の子の事想うと何度でも何度でも何度でも幸せになれた。

 さぼてんの花を枯らしてしまった影を僕にも見せつけて、去っていったけれど。

 だめだって言われるやつ、淋しくて何でも駄目だって決めるんだ、全てが駄目に見える。あの冴えない男も社会から駄目だって言われてただろうな。そして女の子も世の中から駄目だって言われてた。僕も街から、社会から世の中から駄目だって言われた人間だ。同じ人種、同じ駄目なやつ、同じ駄目な三人、何してたんだろう。何だったんだろう。

 まにあわない。懲役三年の実刑だから、多分僕はあの女の子にまにあわない。いや、、、本当は違う。三年の実刑だからとかではなくて、、、。

 嘘だって気づき始めたのは、さぼてんが枯れてから、、、消えてから。

 でもね、女の子との想い出想うと鉄格子の中、何度でも何度でも何度でも救われた。幸せになれる。しぶといからね、どんなに逆境でも何とかやっていける。

 女の子、僕のせいで夢も覚めたって本当か。ばかみたい、僕の方が夢も覚めたよ。

 だけど、いつか、あの女の子が'良いね'って言ってくれた僕の匂いを取り戻したい。懲役三年の実刑だから、僕はあの女の子にまにあわない。そういう事にしておくよ。

 僕は自暴自棄だった頃の自分に戻っていくのが自分でも解る。だけど止める心が動かない。 

 僕は出所したらどうするんだろう、どうなるんだろう。暴力団、やくざにでもなってしまうか。それも良いな。   弱い、弱いよね、本当に弱い。

 人間は本当は優しいはずだった。想えばそれは予定された雨だった。こんなに汚れたままで明日も彷徨う。普通の生活はそれはいらない。自爆したい。吐き気がするけど、吐いてしまえば楽だけど、吐いてしまうのは許されない。

 人間は本当は優しいはずだった。人間は本当は優しいはずだろ、そう信じたい。

 女の子、さようなら。もう二度と会ってやらないよ。

 僕は鉄格子の少年刑務所に送られた。

     完結。