蝉日記。  太陽も月も。十五!。

「君なんか、まだ若い、十六歳だろ。十分に人生をやり直せる。大人になって悪い事をして五十歳や六十歳になって刑務所に何度も入っている人達の中にもほんの僅かだがやり直そうとしている人達がいる。人生は五十歳からでも六十歳からでも'遅い'なんて事は絶対に無い。自分が'やり直そう'そう想った時、誓った時からやり直す事ができるんだ。君は十六歳、五十歳とかを過ぎてやり直そうとしている人達に比べれば、傷も浅いし立ち直れる。可能性がたくさんある。世の中は今まで君達に冷たくしてきたかもしれない。だけど、それは君達が世の中に不貞腐れていたからだろう。君が変わるなら、'やり直そう'そう誓い闘っている姿なら、その姿を誰も、太陽も月も見逃したりしないから。」

 調査官が自分の言葉に酔った様に一気に言ってきた。言い事で自己満足するみたいだ。

 だけど、正論だけど、言ってる内容は形は納得できるけど、そんな言葉だったけど、何の暖かみも感動も無い。ただの言葉だ。これも。

 だって僕の事を愛してくれている人、僕が愛している人達に言われた言葉では無いし、それにこの人は自分の為に言ってるんであって、自己満足で言ってるだけで、僕の為に僕を想って言ってるんでは無いから届かないし響かない。

 言葉は生きている。不思議だ。同じ事、親とか彼女とか愛してる人、愛してくれている人に言われると暖かくて、生きてくる。

 そんな愛する、愛してくれる人の言葉に従えなくてここまで落ちてきてしまったけれど。

 僕は言い返す。

 「僕だって今までの十六年間を、人生を後悔はしている。だった十六年のなのにもう、後悔してる、後悔ばかりだ。やり直したい。できるなら小学生くらいからやり直したいし、小さな後悔は毎日のようにある。でも、それは'今'からではなく、現在からやり直したいんではなくて過去から、過去に戻ってやり直せるならって想いなんだ。今から、現在からなら、もう別にどうでもよいよ。今のままで進んで行く。もし今の考えのまま、人生が小学生からやり直せるならって事なんだ。」

  調査官には何も伝わっていない。

 「君の言ってる事、よく理解できないが、、、。」

 異物を見る目で見てくる。笑える。僕は詳しく説明した。